18枚目のオリジナルアルバム『THE DREAM QUEST』をニューヨークでレコーディング・ミックスし、仕上がってすぐに行われたスペシャルインタビュー。
ニューヨークからの影響や日々、『THE DREAM QUEST』制作までの道のり、アルバムに込めた思いなど、できたてホヤホヤの興奮冷めやらぬ2人に話を聞きました。
「表現におけるコミュニケーションが
常に成り立っている場所だと思います」(吉田)
「ニューヨークに来ると、
いつも駆け出しのような気分になる」(中村)
お二人にとってニューヨークという街は、やはり音楽と密接に結びついていますか?
-吉田美和(以下、吉田) そうですね。自分の音楽をやろうと決心して東京に行った時に、すごいピンときたんですよ。あ、わたしはここで仕事をするんだって。で、たまたま撮影でニューヨークを訪れた時に、またピンときたんです。あ!って。東京で感じた時と同じように、またここでも音楽をやっていくんだっていう気がすごいしたんです。
-中村正人(以下、中村) 『MAGIC』(‘93年リリース)の時ですね。ジャケット写真の撮影で来たんですよ。ロングアイランドでしたね。
そのタイミングで制作自体もされたんですか?
-吉田 はい。それまではロンドンが多かったので、最初はロンドンからスタッフに来てもらったりという感じだったんですけど、だんだんニューヨークにも友人や仲間ができていきましたね。
ニューヨークという街自体が音楽に影響を及ぼすという側面はありますか?
-中村 僕らは西洋音楽をやっているので、そういう意味では、ここは地元ですよね(笑)。R&Bにしても、ソウルにしても、民族音楽なので、その土地の空気感に触れるか触れないかというのは大きな違いだと思います。でも、そういった音楽的な背景にあるものというよりも、たとえばブロードウェイなんかは象徴的なのですが、ここはすべての表現が生まれる元というのかな。
-吉田 うんうん。
-中村 そういうパワーを感じるんですよね。
-吉田 毎日どこかしらで何かが起きているので、ちょっとジャズ聴きに行きたいなとか、ロックの新しい人を観たいなとか、絶対に観たいものがどこかでやってる。ということは聴く人たちがいて観る人たちがいるってことですよね。そういう表現におけるコミュニケーションが常に成り立っている場所だと思います。
-中村 役者もたくさんいるし、ミュージシャンも星の数ほどいるし、そこでみんなが一番を目指している。やっぱりアメリカン・ドリームっていうのがまだあるわけで。エンタテインメントに関しては熱量が違うというかね。
-吉田 そうだよね。
-中村 スタジオひとつにしても。世界の流れを変えてしまうものが今日そこで生まれていたりするので。日本と比べてどちらが上か下かというわけではないんですけど、ニューヨークに来るといつも、お!っていう驚きとともに駆け出しのような気持ちになりますね。圧倒されます。今でも。
オフオフブロードウェイにもたくさん面白い作品があるんだよっておっしゃってましたもんね。
-吉田 そうそう。
-中村 そういったところにも世界の主流になっていくような種がいっぱいある。だから本当にすごいですよね、ニューヨークって。しかも歩き回れるんで。ロスだと車に乗らなきゃいけないんですけど、ここだとそれこそ東京や大阪のように行きたいところに歩いて行ったり、地下鉄で行けたりする。
-吉田 地下鉄乗らないくせに(笑)。
-中村 僕は乗らないんですけどね。
-吉田 怖いんだって(笑)。
ははは。
「わたしたちはいろいろなものの渦中にいすぎて
あまりにも見えてなかったのかもしれないですね」(吉田)
「ドリカムってね、何やるにしても仕込みに時間がかかるんですよね」(中村)
ということで、新しいアルバムの話を伺っていくのですが。前作の『ATTACK25』から3年ぶりなんですが、まずこの3年というスパンについてお聞きします。3年ぶりと一口に言うと長いように感じるのですが、しかしその歩みを振り返ると、着実に結果を出して来たというか、しっかりした歩みだったなという印象なんですが、そのへんはいかがですか?
-吉田 やっぱり「WONDERLAND」とか「ウラワン」といった大きな展開が入った3年だったので、のんびりした時間は本当になくて、あっという間に今ここにいるという感じはします。
2014年の『ATTACK25』からツアー、2015年はベスト盤『私のドリカム』と連動して「WONDERLAND」、そして2016年は裏ベスト盤『私だけのドリカム』と「ウラワン」、とてもはっきりした道筋が新しいアルバムまでにあるなという感じがしています。
-吉田 でもわたしたちはけっこう漠然としていたんです。自分たちは、この流れがあるからアルバム、というふうにはじつは思っていなかったんですよね。
-中村 そうですね。
-吉田 そしたらうちの事務所のヴァネッサが、わたドリ、だけドリときて、言ったんです。やっぱり長い流れの中でスタッフと一緒に過ごしてくると、わたしたちがグーッと行く時と、スタッフが「絶対ここはこのほうがいい!」っていう時が巡ってくるんですよね。
-中村 あっ、ちなみにヴァネッサは…うちの事務所の社長です!
-吉田 だから今回に関しては、ヴァネッサがすごく強くそう言ったので、だったらやってみようかっていう気にだんだんなってきて。
そうだったんですね。僕もスタッフのみなさんと同じ感覚でした。
-吉田 じゃあ、やっぱりそうだったんだ、やっぱりね。
-中村 そうだね。
一歩一歩の歩幅がちょうど同じで来ていたので、次は、という期待感がありました。
-吉田 そっかー。わたしたちはいろいろなものの渦中にいすぎてあまりにも見えてなかったのかもしれないですね。でも一方で気にはなってるんですけど。
すでにリリースしているシングル曲もあるし、この子たちは一体どこでどう発表されるんだろうって。
-中村 配信限定リリースだったからCDで出してないしね。
中村さんも次のアルバムのリリース時期というのは意識されてなかったんですか?
-中村 うん……なんて言うのかな、難しいんですよねえ(笑)。だから、本当にそんな忙しい中で新曲が書けるのかどうかわからなかったんですよね。
でもまあ、スタッフのプッシュがあって、吉田がじゃあやろうって言ったので、そういう意味では、良かったんじゃないですかね。
-吉田 ね。
-中村 うん。大変なのはわかってたんで。先々のスケジュールもわかってたので。ちょっと、難しいなあとは思ってたんですけど。物理的にね。
-吉田 そう、物理的に。ギリギリを超えて--。
-中村 スケジュールがない。
-吉田 “ディリディリ”くらいの感じだった(笑)。
-中村 なんだよそれ、“ディリディリ”って(笑)。
-中村 ドリカムってね、何やるにしても仕込みに時間がかかるんですよね。夏のイベントひとつやるにしても、そこでやる曲をひとつずつミックスしてライヴ作品にしなければいけないので、それを全部自分たちでやってるんですよ。そういう意味では新人の頃なら絶対やれないって根を上げているようなスケジュールなので。まあでも本当に奇跡的にできたので、うん、良かったと思いますね。
-吉田 最初に予定していたスケジュールにまたいろいろなことが入ってきて、ヴォーカル・レコーディングの日にちがどんどん減ってきたりして……。
-中村 それがもともとおかしいんだけどね(笑)。
-吉田 あはは。
-中村 そもそもスケジュールに俺の制作期間は入ってませんからね!
どうするんですか、それ?
-中村&吉田 合間合間で。
-吉田 最後の方になると、どうせ漏れるからニューヨークでミックスをしながらもう1コ違うスタジオをとってそこでヴォーカル録りをしようっていうことになって、5日間くらいおさえてたんですけど、すんごい奇跡的に(ニューヨークに)行く前の日のヴォーカル・レコーディングの時に最後の詩がきて、それで終わったんですよ。オープニングとかアドリヴはちょっと残したけど。ね。
-中村 吉田さんの詩がこないっていうのが最大の不確定要素なんですよね、うちの場合は。
-吉田 そうそう。
-中村 だから吉田さんの詩がこなければ僕のレコーディングの時間になるし、極端に言えばトラックを作ってアレンジして打ち込むっていう時間になるので。
-吉田 じゃ、ちょうど良かったね。
-中村 ふざけるな。
-吉田 うふふふふ。
-中村 もう、そんなんですよ、ずっと。
DREAMS COME TRUE
『THE DREAM QUEST』
2017.10.10(火)発売!全18曲 3,000円(税別)
インタビュー/文:谷岡正浩 写真:MARK HIGASHINO
衣装協力:MSGM /アオイ Calvin Klein Platinum Dr.Martens